家の隣にある
おんぼろアパート、「小川荘」が取り壊しになった。
わたし達が引越してきたときからもうぼろぼろで
ずっとずっと前からそこに建っていたのだろう。
アパートには1階、2階があって
どちらもいくつかは空き部屋
住んでいるのは全員、年寄りだった
少しずつ少しずついなくなっていくような。
この間まで住んでいたおじいさんとおばあさんは
どこに行ったのだろう?
建った当初は小洒落ていたのだろう。
そんな痕跡、面影がなんとなくある。
屋根は瓦、木造。そして手書きの「小川荘」という看板。
吸いこまれるような昭和の香りのする
古くていいアパートだった。
壊した後は駐車場になるらしい。
近くの葬儀屋の。
ひなびたタオルと変な匂いの洗剤を持ってきた
工事のおじさんがそう話してた。
「人狼」でそういう台詞がある
あそこにはなにがあったのか覚えてる?
っていう
"在る"ときはその存在を捉えているけれど
なくなってしまうとそこに何があったかすら
忘れてしまう。忘れられてしまう。
忘れないでいたい。
ひとりくらいは覚えていたっていいでしょう。
ずっとずっと、
わたしにとってその場所は「小川荘」。
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